FAS133為替リスクをヘッジするヘッジ会計の特殊性について為替リスクのヘッジは他のヘッジと少し性質が異なります。なぜなら外貨建資産・負債は期末日にスポットレートで自国通貨に換算され損益認識されるからです(FAS52)。もう少し説明すると、そもそもヘッジ会計とはヘッジ手段であるデリバティブが時価評価され損益認識されるのに対して、ヘッジ対象の損益が認識されないのが不合理だとの認識のもとで考え出されたものです。この点外貨建資産・負債は、ヘッジ会計の適用以前に、為替変動の影響が損益認識されてしまいます。 こういう考え方から、当初FAS133は外貨建資産・負債についてはヘッジ会計の適用はできないものとしていました。しかし、これについては、外貨建資産・負債を期末スポットレートで換算換えするのは時価測定とは全く別のものである、という批判が起こりました。外貨建資産・負債を時価評価するのであれば、将来のキャッシュフローを期末日現在のフォワードレートで算出しこれを現在価値におき直すことになりますが、FAS52で要求している「スポットレートで換算」するというのは、時価測定ではないという批判です。 例をひとつあげてみます。今、外貨建の債権を有していたとして、為替変動による影響を排除するため為替予約を締結したとします。この為替予約は何をヘッジしたのかというと、将来(債権を回収する時点)の為替相場の変動リスクをヘッジしたものです。従ってヘッジ対象とされているリスクはフォワードレートの変動であるはずです(現にヘッジ手段である為替予約の時価はフォワードレートの変動により増減する)。これに対して期末時に当該外貨建債権の換算替を行うのはスポットレートであり、これは直接的にヘッジ対象となっているリスクではありません。そのため、仮にヘッジ会計を適用しなかった場合、完全に満期日あるいは元本が一致しているにもかかわらず損益にゆがみが生じてしまうことになります。。 このような議論があり、結果的にFAS138はFAS133を修正し、外貨建資産・負債及び予定取引・確定契約についてもヘッジ会計の適用を認めるようになりました。 公正価値ヘッジ・CFヘッジに属する外貨ヘッジの例示為替リスクをヘッジするヘッジ会計(公正価値ヘッジあるいはキャッシュフローヘッジ)の例としては以下の通りです。
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