FAS133
ヘッジ有効性について
ヘッジ会計を適用するための要件のひとつに、ヘッジ手段たるデリバティブは、高い有効性
(Highly Effectve)を有していること、というのがあります。この場合は高い有効性とは、ヘッジ対象の公正価値あるいはキャッシュフローヘッジが増減した場合に、デリバティブの公正価値あるいはキャッシュフローがそれを相殺する方向に増減することを言います。したがって、"高い"とはその相殺する割合が高いことを言っています。
なお、注意すべき点としては、ヘッジ対象の公正価値が増減するという場合、その増減はヘッジされているリスクから生ずる増減に限定されることです。例えば、固定利付債について市場金利の変動による時価の変動をヘッジしているとします。固定利付債の時価は、市場金利の変動の他、例えば信用リスクの変動あるいは流動性(どれだけ売買が行われるか)等の要素により、最終的にはマーケット・メカニズムで決定されます。この場合、ヘッジ手段であるデリバティブの公正価値の増減と比較すべきなのは、純粋に市場金利の増減による公正価値の増減に限定されます。なぜなら、ヘッジは市場金利の変動による公正価値の増減をヘッジするものであり、その他の要素についての変動はヘッジ対象となっていないからです。
@有効性の検証方法
ヘッジ開始時点において、どのように有効性を検証するか詳細に決める必要があるが、その方法としては以下の様な方法が考えられる。
1)The Doller-Offset Approach
ヘッジ手段とヘッジ対象の変動額(公正価値またはキャッシュフロー)をそのまま比較する方法
2)Regression Analysis and Other
Statistical
Techniques
統計的手法で双方の相関関係を分析する方法
上記いずれの方法をとるにしても、有効性の検証は以下の2つの両方の視点で行う必要がある。
1)Prospective considerations
将来において高い有効性があるかどうか。
2)Retrospective evaluations
過去において高い有効性があったかどうか。
ヘッジが有効性があるかどうかは、過去において有効であったことに加え、将来においても有効性があると認められることがある。従って、ヘッジ指定を行う時点(=ヘッジ開始時点)において、Prospective及びRestrospectve双方についてどのように検証を行うか決定しなければならない(この点SECはかなり詳細に方法を記述するように求めているとのことである)。
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Aどれだけ相殺されえば「高い有効性がある」といえるか?
具体的にどれだけの割合を相殺すれば「高い」とみなされるかはStatement上明記されていないものの、(FAS133以前にデリバティブの基準のひとつであった)FAS80に準じて、80%〜125%と考えるのが一般的である(細かい話だが、120%なのか125%なのかは多少議論がある)。
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B有効性と会計処理との関係
ヘッジ有効性検証結果 |
有効でない部分の会計処理 |
高い有効性はない |
デリバティブは100%有効でないとみなされ、従ってヘッジ会計は適用できず、全額が直ちに損益認識さる。 |
高い有効性がある
(有効でない部分あり) |
有効でない部分は直ちに損益認識される。(具体的な処理は公正価値ヘッジ及びキャッシュフローヘッジの項目を参照のこと) |
完全に有効である
(有効でない部分が全くない) |
有効でない部分が損益上認識されることはない(有効でない部分がないといっているから当然のこと)。例えば、公正価値ヘッジにおいて完全に有効であれば、ヘッジ対象の損益はヘッジ手段の損益により完全に相殺される。 |
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