FAS133・138

ショートカット法

FAS133は一定の条件を満たした金利スワップによるヘッジについて、「ヘッジが有効でない部分がない(=ヘッジが完全に有効である)」とみなすことを認めています。これをショートカット法とよんでいます。ショートカット法を適用できることの意義は、通常少なくとも3ヶ月ごとに実施すべき有効性の検証を省略できる、ということで、実務上大変メリットがあります。

ショートカット法適用の要件

@ 金利スワップの想定元本がヘッジ対象資産あるいは負債の元本と一致していること
A ヘッジ開始時点において金利スワップの公正価値がゼロであること。従って、すでに存在する金利スワップを用いてヘッジを行う場合は、通常ショートカット法が適用できないことになる(その時点での公正価値はゼロではないのが通常だから)。
B 決済条件が金利スワップ側とヘッジ資産・負債側で一致していること
C ヘッジ対象となる資産・負債がPrepayableでないこと(=満期前に元本の返済が行われないこと)。これに関しては、どのような場合にPrepaybleでないとみなされるかの詳細なルールが存在する。
D 金利スワップの変動Leg側の指標(Index)が金利リスクとして指定されているベンチマーク金利と一致していること。例えば、金利スワップの変動側がLIBORであればOKだが、プライムレートの場合はショートカット法は適用できない。プライムレートはベンチマーク金利でないためである。
  関連:ベンチマーク金利とは
E その他、ヘッジが非有効となるような問題がないこと

上記に加えて公正価値ヘッジの場合は

@ スワップの満了時点がヘッジ対象の資産・負債の満期日と一致していること
A スワップの変動金利にフロア−やセーリングが付されないこと
B スワップの変動金利のRepricingの間隔が十分短いこと(通常は3〜6ヶ月以下)

また、キャッシュフローヘッジの場合は

@ ヘッジ対象資産・負債にかかる変動金利の受払い全てがヘッジ指定されいること
A スワップの変動金利にフロア−やセーリングが付されないこと(ただし同様の条件がヘッジ対象資産・負債側に付されている場合は可)
B スワップの変動金利のRepricing時点がヘッジ対象資産・負債のRepricing時点と一致していること


ちなみに、ショートカット法は例外中の例外処理であるため、上記の要件は厳格に適用することが求められている。