FAS140 - 概略

金融資産移転取引の会計処理
売上が認識される金融資産移転取引において、FAS140は新たに生じた資産及び負債を公正価値で計上することを求めています。残存した移転資産に対する何らかの権利については、当該資産の移転前の帳簿価額を移転した権利部分と残存した権利とに移転時におけるそれらの公正価値をベースに按分することによって測定します。FAS140での証券化取引の損益はこのような帳簿価額の按分計算をベースとして決定されます。

FAS140適用によって計上された資産・負債は、その後は通常の資産・負債と同様に、それぞれ該当する会計基準によって処理されます。従って、場合によっては継続的に時価評価の対象となる場合も考えられます。

FAS140は金融資産・負債の公正価値の評価については、FAS107と同様の指針を明らかにしています。ます市場価格があるものはそれが最も優先的に使用されます。もし市場価額がないものについては、同種商品の価格を参照するかその他の評価テクニックを使用することとなります。ごく例外的には、証券化取引から生じた資産・負債の公正価値を見積もることが実務的に不可能な場合が考えられます。この場合は、金融資産についてはその価額をゼロとなります。金融負債については当該証券化取引からの生じる利益が生じないような価額で測定されますが、その場合もFAS5(偶発事象の会計処理基準)に認識されるべき価額を下回ることはできません。

もし金融資産の移転取引が売却処理を行うための要件を満たしていない場合は、譲渡人及び譲受人は移転取引を担保付の貸付・借入取引として処理します。譲渡人は受け取った対価を負債計上し、移転した資産は引き続き貸借対照表で資産計上を行います。多くのケースでは、譲受人は前受けした資金については金銭債権として計上します。ただし、ある種の取引については担保として受け取った資産は対価として処理され、このため担保資産を受け取った側が受け取った資産を資産認識するとともにその返還義務を負債計上する必要が生じる場合があります。このような取引については、後で、セキュリーレンディングのところで解説します。
回収サービス業務資産・負債の認識と測定
金融資産の移転取引では、しばしば資産の回収サービス権及び移転された資産から生じる将来の利子支払が手元に残る場合があります。FAS140では、譲渡者が金融資産のサービシングを行う義務を負う場合は、かならず当該サービシング業務契約に関する回収サービス業務資産あるいは負債を認識する必要があります。ただし、回収サービス業務契約の条項が十分な対価を定めている場合、保証付のモーゲージ証券化でQSPEに対して資産を移転しその全ての証券を取得しかつそえばFAS115で満期保有有価証券として計上している場合は除かれます。もし回収サービス業務資産・負債が、金融資産の売却あるいは証券化取引から生じたものでなく、売却あるいは引き受けにより取得したものであれば、それはその公正価値で測定され、通常それは支払われた対価となります。回収サービス業務資産・負債は回収サービス収益・損失が生じる期間に渡って償却していきます。また、回収サービス業務資産・負債については、その公正価値をベースとして資産の減損処理あるいは負債の引き上げが検討されます。

回収サービス業務資産・負債について、FAS140はFAS125と同様に回収サービス業務資産・負債の算定にあたっては契約上のサービス料に焦点をおくこととしています。FASBは極めて流動的なマーケットがある場合(例えばモーゲージのサービシング・マーケット等)通常のサービシングと過剰なサービシングを区別することは実務的に困難であるとの結論に達しました。このため、FAS140ではサービシングの利益、つまり回収サービシング業務が資産の所有者あるいは受託者の満足させるレベルで遂行された場合に受取額を用いることとしたものです。
前払いが行われる金融資産
FAS140は、インタレスト・オンリー・ストリップ債権、その他の金銭債権あるいは証券化取引からの受益証券等で、契約上その所有者が実質手的に完全に投資を回収できないような形で前払いされるかあるいは決済されてしまうような金融商品はFAS115の売買可能有価証券あるいはトレーディング有価証券に準じて公正価値で評価するように求めています。
担保付借入取引と担保
証券ディーラー、金融機関、保険会社及びその他の企業がしばしばFAS140で売却処理できないタイプの取引により有価証券を貸したり調達したりします。代表的な例がセキュリティ・レンディングやレポ取引です。FAS140におけるこのような取引の担保付借入取引としての位置付けは従来の実務と何ら変わらないかもしれませんが、これらの取引についての会計処理はFAS140では一様でなく、取引が有価証券貸借に関連したものであるかどうかによることとなります。

レポ取引及び類似する取引では、もし借入者がいつでもその資産を取り戻せる権利を有している場合は、一般的に借入者は担保に供された資産を貸借対照表上区分計上する必要はありませんでした。しかし、この実務は、担保に提供された資産について契約上あるいは慣行上貸付者があるいは再担保に供する権利をを有している場合、借入者は当該資産を担保に供されていない資産と区分して貸借対象表上区分表示することをFAS140が要求したことから、大きく変わることとなりました。貸付者(=担保の受取者)は、担保資産を売却しない限り、受け取った担保資産を資産計上するとともに返還義務を負債計上することは要求されていません。

レポ取引の場合と大きく異なり、FAS140はセキュリティ・レンディング取引においては貸付者に受け取った有価証券を資産計上し返還義務を債務計上することを要求しています。これはセキュリティ・レンディング取引が売却処理されていようが担保貸付処理されていようば、また担保として受け取ったのが現金であろうと貸付者が売却あるいは再担保に付す権利を有している有価証券であろうとにかかわらず適用されます。
負債の消滅認識
FAS140の負債の消滅認識に係る指針はFAS125と同様なものとなっています。FAS140では、負債はもし1)債務者が債権者に支払いを行うかあるいは債務者が債務を免除され場合、あるいは2)債務者が、法的に主たる債務者たる地位から解放された場合、にのみ消滅したとみなされます。従って、実質的ディフィーザンス取引は財務報告の観点からは負債の消滅とは認められません。

開示
金融資産の移転に関する開示は従来の基準よりもより拡大されました。これは特に証券化取引に関連するものと残存した受益権に関するものついて顕著です。これは、金融資産の移転取引、特に金融資産の証券化取引、の開示に関するアナリストや投資家の増大する懸念に対応したものです。
また、担保資産についても新しい開示が要求されています。