FAS140

FAS140とは? 金融資産・負債の移転および消滅の要件および会計処理を定めている基準です。FAS125をReviseするものですが基本的なコンセプトは同様です(資産の消滅要件について財務構成要素アプローチを採用)。SPEを使ったセキュリタイゼーション、Wash Sales(いわゆる時価出し)、ローンパーティシペーション等の処理等、会計処理適用にあたっての指針(Implementation Guide)を明確にされています。
金融資産譲渡の売却処理・金融取引処理判定チャート
FAS140の概略 

FAS140の完全解説 ←NEW & お勧め
<お待たせしました。FAS140の基本的原理から、資産移転取引において売却処理を行うための要件等の詳細解説です。>

FAS125からの変更点

金融資産・負債の移転及び消滅の要件及びその会計処理を定めたFAS125は1996年6月に発行されましたが、適用にあたり実務上の問題あるいは疑問な点等がかなり出ていました。FASBはこれらについて定義の明確化あるいは問題点の解決をはかるためのプロジェクトを設置し、その結果出された基準書がこのFAS140です。

この基準は、数多くの金融資産・負債の移転にからむ取引を行う会社、あるいは銀行を始めとする金融機関の会計処理に重要な影響を与えると考えられます。

基本的にFAS140はFAS125の基準に取って代わるものですが、「金融資産の移転がファイナンス(担保による借入)ではなく売却処理とされるための要件を明らかにする」という基準の目的及び「金融資産は支配下にある場合資産認識し、支配を手放した時点で消滅を認識する」という基本コンセプトに変更ありません。何が変更になったかは以下にまとめました。

FAS125からの主な変更点は以下の通りです(変更点の全てを網羅しているわけではありません)。
   *FAS125とFAS140の比較対照表はこちら

  • 特別目的企業体(SPE)の適格特別目的企業体(Qualifying SPE、以下"QSPE")とみなされための要件をより明確にしました。これはセキュリタイゼーション取引において売上処理とできるかどうかとういう点に関連するものです。FAS140ではQSPEとみなされるためには少なくとも10%の持分は資産の移転者(Transferor)と関連を有しない第三者によって保有されていることを要件としています。さらに、QSPEが保有できる資産の種類と金額についても制限を付しました。

  • FAS140は、QSPEあるいはサービサーのいずれも、資産の処分について、"Commercially reasonable and customary amount of discretion(ある一定の決定権)"を行使しないことを求めています。この問題は、多くのセキュリタイゼーション、特に不動産ローンやその他の複雑な金融商品をからませたセキュリタイゼーションに大きなインパクトを与えるものです。このため、FASBはEITFでQSPEが行ったよりサービシング業務の指針を明らかにしています。
  • FAS140は、QSPEへの資産譲渡を売却として会計処理するための条件として、@譲渡者が譲受者(SPE)に対して譲渡者への通常以上のベネフィットを与えることを強制できないこと、及びA譲渡者が譲渡された資産への事実上の支配力を及ぼしえないこと、をあげています。これらは従来の基準よりもより厳しいものとなっており、リボルビング・ピリオドのセキュリタイゼーションに重要なインパクトを与えるものとなっています。
  • FAS140は、担保付借入取引において担保に供された資産を分離表示することを求めています。これは例え当該資産が借入者(担保を提供している側)によっていずでも請け出すことができる場合でも必要です。なお、貸付者(担保の提供を受けている側は、担保資産を処分しない限り、資産認識する必要はありません。
  • 有価証券貸借取引(セキュリティーレンディング)において、受け取っているいかなる担保及びそれに関する義務(担保の返還義務)を貸借対照表で認識する必要があります。