日米租税条約 - 二重課税の排除

二重課税とは何か

原則として、一方の国の居住者(個人・法人)に対して他の国は自国内を源泉とする所得について課税する権利を有しています(事業所得については恒久的施設を有している場合にのみ課税される)。例えば日本は米国法人に対して日本国内を源泉とする所得について(のみ)課税することができます。その一方で、どちらの国も自国の居住者についてはその源泉地を問わず全所得について課税する権利を有します(なお国によっては自国の居住者についても自国を源泉とする所得のみに課税するところもありますが、米国・日本双方とも自国の居住者については全世界所得に対して課税します)。

例えば、ある米国法人が日本に支店を有しており、米国源泉の所得に加えて日本源泉の所得を有していたとします。その場合、所得に対する米国及び日本国の課税は以下のようになります。

米国 日本
米国源泉の所得(本店の所得) 課税対象 非対象
日本源泉の所得(支店の所得) 課税対象

このように日本源泉の所得は米国・日本国両方から課税を受けてしまいます。明らかにこれは二重に課税されていることがわかります。

以上のケースは米国会社が直接日本国内を源泉とする事業所得を有しているケースですが、これが日本支店ではなく子会社であったらどうでしょうか。まず、当然のことながら日本法人はその所得について日本国から法人税の課税を受けます。次に、日本法人が税引き後の利益を米国の親会社に配当するとどうでしょうか。この配当についてはまず日本において源泉税が徴収されます(この米国親会社が日本に恒久的施設を有しないとすると源泉分離課税となります)。さらにこの配当所得は米国親会社の所得となりますので、米国で所得税の課税を受けます。源泉税まで考えると少し複雑になるので、これを無視した場合、日本法人の所得に対して日本(所得税の課税)及び米国(配当への課税)双方が課税をしていることになります。例をあげます。今日本子会社(100%子会社)の所得が100だったとします。日本の法人税の税率を30%(地方税はとりあえず無視)、米国連邦税の税率を35%とすると米国親会社の最終的は受取額は以下のようになります。

日本子会社の税前所得 100
法人税 30
日本子会社の税引後所得 70
米国親会社への配当額 70
連邦所得税 24.5
米国親会社のネット受取額 45.5

日米双方に課税されることにより、最終的に手元に残る金額は45.5%にすぎません。明らかに二重課税が行われていることがわかります。

外国税額控除の制度

このような二重課税課税を回避するために、日米租税条約では両国それぞれ外国税額控除の制度により他方の国で課税された税額を自国の税額から控除することを確認しています。なお、外国会社からの配当に係る外国税額控除は、その外国会社の10%以上の議決権を有している場合に適用されます。