日米租税条約 - 貸付金の利子

利子所得の源泉地

まず、日米租税条約では貸付金の利子の源泉地は以下の通りとされています。

日本源泉 米国源泉
貸付金の利子所得 日本国居住者が支払った利子 米国国居住者が支払った利子

上記の通り、利子所得の源泉地はその貸付金の支払者がどちらの居住者であるかによって決まりますが、非居住者が恒久的施設を有している場合で、貸付債務が当該恒久的施設について生じているときは、恒久的施設が存在する国が源泉となります。

【事例】
日本法人C社は米国法人であるA社に対する貸付から利子を受け取った。

【課税関係】
もし、この利子所得が米国源泉所得であれば、日本法人C社が得たこの利子所得は米国側からも課税を受けます。もし、これが日本源泉所得であれば、米国側からは課税を受けません。(なお、C社は日本居住者であるため日本での課税は避けられません)。

【源泉地の判断】
原則としては、貸付金利子の源泉地は、利子を支払者の居住地で決まります。米国法人は米国居住者であるため、原則としてこの利子は米国源泉の利子所得となります。

ただし、もし米国法人A社が日本に恒久的施設を有しており、この貸付債務がその恒久的施設のために用いられている場合は、恒久的施設が存在する国である日本を源泉とする所得となります。
貸付利子に対する課税

【要約】
日米租税条約では、非居住者の利子所得(貸付金以外の公社債利子、預貯金利子、合同運用信託の分配金等も同じ)に対する課税の限度額は10%とされています。

一方の国の居住者が他方の国を源泉とする利子所得を受けた場合、その他方の国から課税されうることが租税条約上確認されています。例えば、日本の居住者が米国法人に対して貸付けを行い、その利子を受け取った場合は米国からの課税を受けるということです(その米国法人が日本に恒久的施設を有しており貸付債務が当該恒久的施設について生じている場合を除く)。しかし、租税条約上、その税額は10%以内とされています。

なお、その一方の国の居住者が他方の国に恒久的施設を有しており、かつ利子が支払われた貸付債権がその恒久的施設と実質的な関連を有している場合は、上記の額限度額(10%)の規定は適用されません。その場合は通常の税率により課税されます(恒久的施設を有している場合は通常の税務申告が必要です)。

米国居住者の日本における貸付金利子課税

【日本税法の規定】
非居住者あるいは外国法人が日本国内源泉の貸付利子所得を受け取った場合は、20%の所得税源泉徴収が行われます。また、もしその非居住者あるいは外国法人が日本国内に恒久的施設を有している場合は所得税あるいは法人税の申告をする必要があり、その配当所得もその課税所得に含まれることになります

【日米租税条約による修正】
米国の居住者が日本国内に恒久的施設を有していない場合、その米国居住者の日本源泉貸付利子所得は日本からも課税されますが、税率は租税条約上の軽減税率が適用され10%の源泉徴収となります。

【要約】
以上の結果を要約すると、米国居住者に対する日本国内源泉の貸付利子所得についての日本での課税は以下のようになります。

日本国内に恒久的施設
有している場合
利子が支払われた貸付債権が恒久的施設と実質的関連を有している場合 20%の源泉税を受けたうえで、所得税・法人税の申告も行う(源泉徴収された所得税額は控除できる)。
利子が支払われた貸付債権が恒久的施設と実質的関連を有していない場合 10%の源泉税を受ける。源泉を受けた時点で日本での課税関係は終了する(所得税・法人税の申告は不要)。
日本国内に恒久的施設を有していない場合
日本居住者の米国における配当課税

【米国税法の規定】
非居住者あるいは外国法人の、米国事業(もしやっていれば)に実質的関連を有さない貸付金利子所得は、30%の源泉徴収の対象となります。また、もしその非居住者あるいは外国法人が米国で事業を行っており、かつ当該利子所得が米国事業に実質的関連を有する場合は、源泉徴収の対象とはならない代わりに、その非居住者・外国法人の所得税申告において課税所得に含められます。
  関連>米国での外国人に対する源泉税

【日米租税条約による修正】
日本の居住者が米国国内に恒久的施設を有していない場合、その日本居住者の米国源泉利子所得は米国からも課税されますが、税率は租税条約上の軽減税率が適用され10%の源泉徴収となります。

【要約】
以上の結果を要約すると、非居住者・外国法人に対する米国国内源泉の貸付利子所得についての米国での課税は以下のようになります。

米国国内に恒久的施設
有している場合
利子が支払われた貸付債権が恒久的施設と実質的関連を有している場合 源泉税は徴収されない。利子所得は連邦所得税の課税所得に含めて申告する。
利子が支払われた貸付債権が恒久的施設と実質的関連を有していない場合 10%の源泉税を受ける。源泉を受けた時点で米国での課税関係は終了する。
米国国内に恒久的施設を有していない場合