日本税務−外国法人の日本での課税の検討手順

外国法人が日本国内でなんらからの所得を得た場合、それが日本でどのように課税されるかは以下の手順で検討します。

@所得税課税を受けるか?

【原則】
「外国法人は一定の国内源泉所得について所得税の課税を受けます。またその場合、所得税は支払時に源泉徴収されます(支払者が源泉徴収し納付する義務を負っています)。」

所得税法第5条第2項によると、外国法人は国内源泉所得のうち第161条第1号の2〜7号又は第9号〜第12号に掲げられるものの支払いを受けるときは所得税を納める義務があるとされています。所得税の対象となる所得は以下の通りです。

所得税法 所得種別 源泉徴収
税額
(支店を有して
いる場合
161条1号の2 不動産の譲渡所得 10% 10%
161条2号 人的役務の提供対価 20% 免除
161条3号 不動産等の賃貸所得 20% 免除
161条4号 債券・預貯金の利子 15% 15%
161条5号 配当 20% 20%
161条6号 貸付金の利子 20% 免除
161条7号 知的財産・動産の使用料 20% 20%
161条9号 広告宣伝のための賞金 20% 免除
161条10号 生命保険契約に基づく年金 20% 免除
161条11号 金融類似商品からの所得 15% 15%
161条12号 匿名組合からの利益の分配 20% 20%

また、所得税法第212条第1項によると、外国法人に上記の国内源泉所得を支払う者は上記の税額を源泉徴収する義務を負います。つまり、外国法人は支払いを受ける時点で税額を差し引かれてしまうことになります。

なお、外国法人のうち日本に恒久的施設(PE)を有している場合は一定の所得について所得税の課税、従って源泉徴収が免除されることがあります("支店を有している場合”の欄を参照してください)。その代わり恒久的施設を有している外国法人は法人税の申告を行う必要があります。法人税については以下を参照してください。

A法人税課税を受けるか?

【原則】
「外国法人は日本国内に恒久的施設を有している場合は法人税の課税を受けます。」

恒久的施設(PE)には3種類あり、1号PE(支店)、2号PE(建設PE)及び3号PE(代理PE)と呼ばれます。1号〜3号とは法人税法第141条の1号〜3号に規定されていることからそう呼ばれています。ちなみに、1号の恒久的施設は「国内に支店、工場その他事業を行なう一定の場所」と定義されています。外国法人は日本に有している恒久的施設の種類(1号〜3号)によって法人税の対象となる所得が異なってきます。ただし、1号PEの場合は、その全ての国内源泉所得が法人税の課税対象となります。ある所得が法人税の課税対象となる場合で、それが所得税課税(源泉聴取)をすでに受けている場合は法人税の課税額からその所得税額を控除することができます(所得税控除制度)。

なお、日本国内に恒久的施設をまったく有していない場合は、法人税は課税されません。従って、もし所得税の源泉徴収を受けている場合は、それで日本の課税関係は終了します。*なお不動産の賃貸賃貸収入あるいは売却収入がある場合等は、恒久的施設を有していない場合でも、法人税が課税されることがあります。

B租税条約による修正の有無

検討対象としている外国法人の居住国と日本との間で租税条約を締結している場合は、上記で検討した結果が租税条約により修正されないか検討する必要があります。というのは、条約の規定は国内法に優先するため、双方が異なる場合は租税条約の規定が適用されるからです。例えば、外国法人が米国法人で、かつ日本に恒久的施設を有していないケースで、日本国内源泉の貸付金利子を受け取った場合、日本の所得税法上は20%の源泉徴収を受けることになりますが、日米租税条約により源泉徴収は10%に軽減されます。これは税率軽減のケースですが、日本の法人税・所得税法上の国内源泉の定義と日米租税条約での定義が異なる場合もあります。例えば貸付金は日本の税法上は使用地主義(貸付けられた資金が使用された場所)を採用していますが、日米租税条約上は債務者主義(借入人の居住地)が採用されています。このような場合は日本の税法では国内源泉でも、課税関係は日米租税条約に従い国外源泉として処理されるケースが生じます。