金融商品会計実務指針#143

具体的要件-ヘッジ取引開始時(事前テスト)

業はヘッジ取引開始時に、次の事項を正式な文書によって明確にしなければならない。

(1) ヘッジ手段とヘッジ対象

企業は一般的に市場リスク、すなわち、事業活動に伴う為替変動、金利変動、価格変動のリスクにさらされている。ヘッジ会計を適用するためには、ヘッジ対象のリスクを明確にし、これらのリスクに対していかなるヘッジ手段を用いるかを明確にする必要がある。ヘッジ対象とヘッジ手段の対応関係として、具体的には、例えば、外貨建取引(金銭債権債務、有価証券、予定取引等)の為替変動リスクに対して為替予約取引、通貨オプション取引、通貨スワップ取引等を、株式の株価変動リスクに対して株式オプション等を、固定金利又は変動金利の借入金・貸付金、利付債券等の金利変動リスク(相場変動リスク又はキャッシュ・フロー変動リスク)に対して金利スワップ、金利オプション(キャップ及びフロアーを含む。)、金利先渡、金利先物等を、非鉄金属、食糧、食品、燃料等の商品価格変動リスクに対して国内外の商品取引所における商品先物取引・商品オプション取引等をヘッジ手段として用いることが考えられるので、これらの関係を正式な文書によって明確にしなければならない。また、ヘッジ手段に関しては、その有効性について事前に予測しておく必要がある。

(2) ヘッジ有効性の評価方法

ヘッジ有効性の評価方法が適切であるかどうかは、リスクの内容、ヘッジ対象及びヘッジ手段の性質に依存する。

企業は、ヘッジ開始時点で相場変動又はキャッシュ・フロー変動の相殺の有効性を評価する方法を明確にしなければならない。これには、第171項に述べるオプションの時間的価値等の処理方法などが含まれる。企業は、ヘッジ期間を通して一貫して当初決めた有効性の評価方法を用いてそのヘッジ関係が高い有効性をもって相殺が行われていることを確認しなければならない。

個別ヘッジの場合はヘッジ対象とヘッジ手段が単純に一対一の関係にあるので、ヘッジ対象とヘッジ手段の相場変動又はキャッシュ・フロー変動を直接結び付けてヘッジ有効性を判定する。これに対し、ヘッジ対象が複数であり、相場変動又はキャッシュ・フロー変動をヘッジ手段と個別に関連付けることが困難な場合、第152項の要件を満たすものに限り、ヘッジ手段をヘッジ対象と包括的に対応させる方法(包括ヘッジ)も採用できる。企業は個別ヘッジによるか包括ヘッジによるかを事前に明示しなければならない。

また、通常、同種のヘッジ関係には同様の有効性の評価方法を適用すべきであり、同種のヘッジ関係に異なる有効性の評価方法を用いるべきではない。