金融商品会計実務指針#68

満期保有目的の債券の定義

券は、国、地方公共団体、事業会社その他の法人が、不特定多数又は特定の投資家から資金を借り入れるために発行する有価証券であり、その発行者が所有者に対して償還する義務を負う負債証券である。ここでいう債券には、国債、地方債、社債、新株予約権付社債( 代用払込が認められるもので、従来の非分離型新株引受権付社債と経済的実質が同一であると考えられるものをいい( 企業会計基準委員会実務対応報告第1 号「新株予約権及び新株予約権付社債の会計処理に関する実務上の取扱い」( 以下「実務対応報告第1 号」という。) Q 2. A2.(1 ))、平成14 年3 月31日以前の発行決議により発行された新株引受権付社債を含む。以下同じ。)、転換社債型新株予約権付社債( 代用払込の請求があったとみなす新株予約権付社債で、従来の転換社債と経済的実質が同一であると考えられるものをいい( 実務対応報告第1 号Q 2. A 2.(2))、平成14 年3 月31日以前の発行決議により発行された転換社債を含む。以下同じ。)、コマーシャル・ペーパー、その他債務が証券化されたもの、一定額で償還される株式(償還株式)などが含まれる。償還株式は厳密には債券ではないが、一定額で償還されるという債券との類似性に着目してその範囲に含めるものとする。なお、一定額で償還されない償還株式は持分証券(株式)として取り扱う。

債券を満期保有目的の債券に分類するためには、あらかじめ償還日が定められており、かつ、額面金額による償還が予定されていることを要する。したがって、債券であっても、その属性から満期保有目的の条件を満たさないものは、この区分に含めることはできない。

例えば、転換社債型新株予約権付社債は、債券の一種であるが、その性質上、満期まで保有するメリットが少なく、満期前に株式に転換することが期待されているため、基本的には満期保有目的にはなじまない。

前者の「あらかじめ償還日が定められた」という条件について、満期の定めのない永久債は、属性としては満期保有目的の条件を満たさない。ただし、償還する権利を発行者がコール・オプションとして有しているものについては、その契約条項等からみて、償還が実行される可能性が極めて高いと認められれば、満期保有目的の条件を満たすものといえる。

その他、抽選償還が特約として付されている債券又は期前償還する権利を発行者がコール・オプションとして有している債券(いわゆるコーラブル債)も、満期到来前に償還される可能性があるとしても、満期保有目的の条件を損なうものではない。

後者の「額面金額による償還」という条件について、債券が属性として有する元本リスク(信用リスク、為替リスク等)は満期保有目的の条件を否定するものではない。しかしながら、例えば、償還時の平均株価等によって償還元本が増減することが約定された株価リンク債、償還時の為替相場によって償還元本が増減する為替リンク債等の仕組債については、そのスキーム上リスクが元本に及ぶものであるため、複合金融商品として組込デリバティブ部分を区分処理するとしても満期保有目的の条件を満たさない。