FAS144

FAS144とは

FAS144は長期性固定資産の現存あるいは除却に関する会計処理を定めたもので、FAS121APB30に取って代わるものです。

FAS144を発行した理由

FAS121APB30上で非継続事業(ディスコンティニュー・オペレーション)となる事業セグメントの会計処理について明確にふれていなかったため、除却予定の長期性固定資産については2つの会計処理が並存する形となっていました。FASBFAS121で構築したフレームワークをベースに、売却により除却される長期性固定資産についての会計処理を一本化し、さらにFAS121適用に際し生じた問題点(インプリメンテーション・イシュー)の解決を図ったものです。

保有・使用目的の長期性固定資産について

FAS144は、FAS121の考え方をそのまま踏襲しています。以下がFAS121の基本的な考え方です。

a) 長期性固定資産の帳簿価額が、当該資産からもたらされるキャッシュフロー(割引前)により回収できない場合に評価減を認識する。
b)  資産の帳簿価額と公正価値の差額が評価減の金額となる。

適用上の諸問題を解決するための措置】

  • 営業権をそのスコープから外しました。従って、営業権を減損のテストの対象となる資産に按分する、という処理も削除されました。
  • キャッシュフロー見積にあたり(加重した)可能性を加味したアプローチを示しました。これは資産の帳簿価額の回収のための行動過程が複数ある場合、あるいは見込キャッシュフローがレンジとして見積もられるケースに適用できるアプローチです。
  • プライマリー・アセット(主要資産)アプローチを構築しました。これはグルーピングされた資産・負債について見込キャッシュフローの対象期間を決めるために使用するアプローチです。  
売却以外の手段により除却される長期性固定資産

FAS144は、長期性固定資産のうち使用停止されるもの、同種の資産と交換されるもの、あるいはスピンオフにより株主に分配されるものについては、それが実際に除却されるまでは、保有・使用目的とみなすことと定めています。

適用上の諸問題を解決するための措置】

  • 使用停止する長期性固定資産については、APB20に従ってその減価償却期間を短縮することを求めています。
  • APB29“貨幣性資産を介さない取引きの会計処理”を修正しました。これは、同種資産の交換時あるいはスピンオフにおける株主への分配時に、帳簿価額が公正価値を上回る場合、評価減を認識するように修正したものです。
売却により除却される長期固定資産

売却により除却される長期性固定資産に対する会計処理モデルは、その資産が従来保有・使用されていたか、あるいは新たに取得されたものなかに関わらず一律に適用されます。会計処理モデル自体はFAS121と変わりません。すならち、売却目的で保有する長期固定資産は帳簿価額と売却費用を差し引いた公正価値のいずれか低いほうで測定し、また、減価償却をストップします。従って、非継続事業については、もはや実現可能価額ベースでの測定は行わず、また将来の事業損失はそれが発生するまで認識されません。FAS144APB30の非継続事業に関する損益計算書表示方法は変更していないものの、単に事業セグメントにとどまらず、企業体のコンポーネントを含めることとして、その開示範囲を拡大しました。企業体のコンポーネントとは、そのオペレーション及びキャッシュフローが、運用上あるいは財務報告目的の観点から、明確に事業体のその他の部分より分離認識できるものをいいます。売却目的で保有するかあるいは除却された企業体のコンポーネントは、もし当該コンポーネントのオペレーション及びキャッシュフローが今後の企業体の継続的オペレーションから除外される(あるいは除外された)場合で、かつ企業体が当該コンポーネントのオペレーションに継続的に重要な関与を持たない場合は、非継続事業として表示されることとなります。

適用上の諸問題を解決するための措置】

  • どの時点で長期性固定資産が売却目的で保有されることになったかを判断する基準をFAS121以上により明確化しました。いくつかの要件を例示すると、A) 資産は現時点の状況下においてただちに売却可能な状態である必要がある。ただし、資産を売却する際の一般的・慣例的な条件であれば、ただちに売却可能と判断できる。 B) 資産の売却の可能性が高い必要があり、かつその移転は、基本的には1年以内に生じ、完全な売買として認められるものである必要がある、となっています。
  • 決算日以後で財務諸表発行前に売却目的資産の要件を満たすに至った場合の長期性固定資産の会計処理についての指針を明らかにしました。この指針は決算日まで遡って資産を売却目的と再分類することを認めたものです。従って、従来のEITF Issue No.95-18“期末日後で財務諸表発行前に測定日が生じた非継続事業の会計処理”は取って代わられました。
  • 従来売却目的として分類されていた資産が保有・使用目的に分類替された場合の会計処理についての指針を明らかにしました。保有・使用目的に分類変更された資産は、a) 分類変更される直前の帳簿価額に、以前から保有・使用目的として分類されていたなら計上されていたであろう減価償却費を調整した価額、あるいは b) 保有・使用目的に分類替された時点での公正価値、のいずれかの低いほうで測定されます。
FAS144適用開始日

FAS144の規定は、20011215日以後に開始する事業年度の財務諸表に適用されます。また、適用は原則的に遡及はしません。